セリンは少しためらいがちに頷いた。

　嘘か本当かわからないようなことを真顔で答える。さすがに声は、多少低めてはいるようだ。

　言いつつガンダルフに向かって盗賊ギルドの合図を送ってみる。しかし、ガンダルフはそれに気付かなかったように答える。

　ルキシュの袖をひっぱってしゃがんでもらってから　ガンダルフには聞こえないようにルキシュの耳元で囁く。
　もちろん、顔には楽しげな表情を浮かべ　あくまでも子供がお友達に内緒話でもしているかのように見せかけて。
　ルキシュもアンリに習うように、悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

　それだけ言い残して、ジジイは帰る。

コリューンは、氷の精霊の方に意識を集中し始めた。何とかコンタクトを取ろうとする。

　コリューンが何やら魔法を使い始めたのを見たギャスパーはセリンの方に向き直る。

　セリンを怯えさせないよう、少し距離をおいて腰を下ろす。

　しかし、セリンは腰を下ろしたこと自体に対して怯えたように少し身体を下げた。
　と………

　コリューンが話しかけようとした精霊が、不意に、精霊使いにしか聞こえない怒りの声を上げた。
　もっとも、精霊使いでなくとも、不意に部屋の温度が数度下がり、ギャスパーのズボンの表面にぴしぴしと白い霜のようなものが付着し始めたことで、何かおかしいことは分かる。

　慌てて立ち上がり、ズボンの霜を払おうとする。

　等と言っているが、ルキシュの顔も寒さでひきつっている。

　ギャスパーはセリンに向かって頭を下げる。
　そして、ルキシュはどうしていいかわからない、と言ったようにコリューンを見つめた。

　精霊語で氷の精霊に話しかける

　精霊はいきり立っていて、落ち着いて話が出来る状態ではなさそうだ。もっとも、そこいらの精霊から意味のある話を聞き出すのも本来難しいことだが。

　辺りをきょろきょろと見回しながら、精霊らしきものを探している。