セレンは使用人室で横になっていた。
熱は引いてますが、まだ疲れが残っている様子。

部屋に人が入って来ると、目を向けて来る。
会話をしても大丈夫そうである。

煤だらけの姿を見て聞いてくる。

重苦しい沈黙。

突然の宣告に戸惑うセレン。

言いながら、涙がこぼれる。

フェリオから目を逸らして、止まらない涙をシーツで拭く。

フェリオはコレットの今や遺品となった所持品の入った袋を回収する。

だがフェリオの確認に、ただすすり泣く音だけが聞こえ、返事は返って来なかった。

使用人部屋から出てきたフェリオは扉の前に立っていたアルスと出会う。

アルスはそう言って部屋に入って行った。

フェリオの方を見て俯く。

セレンの泣き声が止み、アルスが部屋から出て来る。

安請け合いになりそうなことだけにさすがに即答はしなかった。

箱庭の前でたたたずむジーク。

先日と変わらず無邪気に子供達が遊ぶ声が遠くに聞こえてきた。
そして箱庭は箱庭で、もちろんジークの問いのは答えず、ただそこにあるだであった。

――と、誰かが突然後ろから目隠しをして来ます。

手が外された。
振り向くとティアードが立っている。

模型を示す。

ちらりと見て、

教えてくれない。

それを聞いてティアードは溜め息ひとつ。

ちらっと振り返ると、そう言って帰って行った。

ヴェア、アルト、フェリオ、エデンの4人は、アルスの案内でコレットの実家に向かう。

アルスは歩きながら、

• 母親の名前は「イーシャ」という事。
• 父親は出稼ぎに出て、音信不通らしい事。
• コレットに兄弟姉妹は居ない事。

を話してくれた。

エデンに釘を刺しておく。

アルト達はコレットの実家があるというロスフェルの貧民街へと足を向けた。

コレットの実家は、粗末なバラックの狭い１室であった。
開いている扉(又は窓)から、イーシャが１人、室内で糸巻きの内職をしているのが見える。

アルトは外から、開いている扉をノックした。

最初、共通語で話し掛けても意味が通じない様子であった。
東方語で言い直して初めて通じる。

座ったままで「どうぞどうぞ」、と歓迎される。
来客の中にアルスの姿を認めるイーシャ。

少し微笑んで、

一行は、コレットの実家を後にした。

箱庭を後にしたジークはその足でひな鳥亭へと向かった。
もはや通いなれた感のある店の中へと入る。

最後は、床に寝てる犬に向かって。

注文のエールを持って来る。

にこにこ笑うだけで、答えてくれなかった。
ジークは不思議そうな顔をしつつもエールを口へと運んだ。

イーシャの元を訪問した後。
アルトは、明日コレット達の墓に供える花を求めた。

――寂しげなお墓が明るくなるような、綺麗な色の花を。

路上の花売りが見せる中から、百日草を選ぶアルト。
合わせてかすみ草も付けてもらい、砦に持ち帰った。

エストは親父に呼ばれて、足りない食材の買い出しを頼まれていた。
親父さんは、線の細い優男である。

エールの杯を片付けながら、見送ってくれた。

ひな鳥亭を出たジークは、道端でランヤンパを売る屋台に寄った。
夕食代りに幾つか買い求め、砦に戻る。

夕食前に厨房に行くアルト。
夕食の準備をしているティアードに、声を掛ける。

置いてある酒の瓶を指差して聞く。
ティアードは肯いた。

酒と残っていたランヤンパを手に、夕焼け空の下で溜め息を付く。

夕焼けを眺め、城と一緒に黄昏るアルトであった。

ショックの抜けてないトーラ、対照的に元気なティアード、そしてエデン。
3人だけで1つのテーブルを囲む。

ルドラやアルスの姿はない。

2日目の夕食は昨晩とはうって変わって質素な物であった。
本日死亡者5名、炊事に回す充分な水が無い、セレンはまだ休養中、という 3つの理由に因るもの。

メニューは焼き物、炒め物中心である。

黙って食べる。
ティアードは食べていて(口に物が入っており)、何も喋らなかった。

夕食後。
エデンとヴェアリアスだけがフォンの住まいを訪れた。

銀貨の入った袋を出します。
前金 300ガメルを除いた残りの報酬、1,200ガメルです。

そう頭を下げて二人は、離れの塔を後にした。