ケーキカットも終わり、テーブルには次々と料理が運ばれてくる。
美味しそうな匂いが会場を包んだ。

ミリィの手にある、白と緑を基調にした丸い形のブーケを見ながら聞いてみる。

遂に。
遂に禁断の真実を、何気ない口調でさっくりと言い放ってしまった……しかも、この晴れの場で（笑）

周囲の反応に気付かず、愛情と憧憬に満ちた視線をちらちらとナッシェレに向けつつ、甘い夢を語るミリィ。
それににこにこと笑顔で答え、身をかがめてミリィの頭をなでるナッシェレ。

しかし空気は（主にリエラを中心に）凍っていく……。
そしてリエラの脳裏には、ミリィとおんなのこ同士の親友として過ごしてきた日々の、あんなこと やこんなことが超高速で去来していくのであった……！

あまりの衝撃に頭がついていかず、呆然としている。

オルフェは突っ込みを入れたそうな顔でミリィを見ている。

ミリィはきょとんとしている……何を驚かれているのか、いまひとつわかっていないらしい（笑）
ちなみに学院では、入学初日にいきなり「君キミ！　そっちじゃないよ、キミは女子寮なんだからあっち！！」と言われて以来卒業までず〜っと何の疑問も抱かず女子寮暮らしを続けていたという過去が……。

まだきょとんとしている。
彼なりの理由付けがなされていることだったりするので、余計に性質が悪い（笑）

まだまだきょとんとしている。
彼にとって服とは、可愛ければ男性用も女性用も関係ないものらしい（笑）

アリエラは混乱している（笑）

耳まで真っ赤にしながら、アリエラにだけそっとたくし上げたスカートの中身を見せるミリィ。
傍目には倒錯きわまりない光景なのだろうけれど、当事者のアリエラにとってのインパクトたるや想像を絶するものと思われる（合掌）
（ちなみに身長差があるので、アリエラのすぐ傍にいるキュラスには中身が見えずに済んだらしい……）

危険を察知し、がばっとリエラの視界を遮るように抱きしめるキュラス。
しかし、時既に遅く。

一瞬ちらりと見えてしまった女の子にはありえないもののあまりの衝撃に、一気に血の気が引いていく。

今にも倒れそうなぐらい真っ青な顔になって、ブツブツと呟いていたかと思うと、いきなり叫び出した。

当然未婚女性に「殿方」がしてはいけない内容てんこ盛り（笑）

キュラスの胸にしがみつきながら、ボロボロと泣き出した。

キュラスは中庭から見える空を見上げながら、呆然としている（笑）

救いを求めるようにキュラスを見上げたが、キュラスの様子をみて、またポロポロと泣き出した。

突然の展開におろおろしながら、懸命にフォローを入れようとしてみたり……これだけやって、未だに状況が飲み込めていないらしい（笑）

どうやらミリィの声も聞こえていないらしい（笑）

微妙に弱気だ。

とても不安そう。

絶望に打ちひしがれたような表情で呟く。
そして、へなへなと力なく座り込んで、またポロポロ泣きはじめた。

さすがにフォローの入れようが無かったようだが、何かを思いついたらしくリラを手にして演奏の体勢に入る。

何とも言い難い表情で、キルリックは、アリエラの肩に手を置いた。

心に平穏を取り戻し、ピタリと泣き止む。
そしてぼんやりと放心したような表情でキュラスを見上げた。

目が笑ってない笑顔でそう言うと、思わず腰に手をやるが、丸腰である事に気づく（笑）
そのまま首を軽く振ると、青白い炎をまとったままミリィの方へつかつかと歩いていく。

そこへミリィとキュラスの間へ割って入り

壁役（笑）

青白い炎をバックに（笑）

ちいさな体をせいいっぱい使って、ミリィはリュントのさらに前に、つんのめるようにして割り入りなおしていった。
尋常でない様子のキュラスの眼差しにおびえて小さく震えながらも、薄い唇を引き結んで、すぐにでも襲い来るであろう拳の衝撃に身構える。
それなりに勇敢な風情ではあるはずなのだが……どうみても「懸命に立つ女の子」としか見えないのが、変態女装男の業の深さといったところか（笑）

意外とあっさり身を引く。
すれ違い様にこそっと

キュラスの身体にヴァルキリーの力が宿った！

ど　す　っ。と鈍い音を立てて、重い一撃がミリィのみぞおちに入った。

勢いで足を浮き上がらせるほどの威力でめりこんだ拳を起点に、ミリィの体がきれいな『く』の字に折れ曲がる。
それでも、深々と突き刺さった拳が体を離れたときに、ふらつきながらも嘔吐せずに立っていられたのは、冒険者としての研鑽の日々の賜物だろうか？

朦朧とした眼差しをキュラスに向けながら、ミリィは意思に反してのた打ち回る横隔膜を必死で無視しながらみぞおちから手を離し、すっくと背筋を伸ばしてみせた。

相変わらず青白い炎をまとったまま、氷のような冷たい視線でミリィを見下ろす（笑）

いつの間にか、キルリックは、未だ怒りの覚めやらないキュラスに後ろから近づき、その背中に、手を置いた。

一瞬何が起こったのかわからないような表情をし、軽く頭を振った後、冷静さを取り戻してつぶやく。
しかし、なにやら脱力したかのようにうつむいていた。

そんなキュラスの様子を見て、不安そうに声をかける。
立ち上がる気力も無いのか座り込んだままで、キュラスを見上げる瞳は涙のせいで真っ赤に腫れあがっていた。

今まで見せたことの無いような深い自責の表情を顔に張り付け、アリエラの前に跪く。

真っ赤になった目元に親指で触れながら、なだめるように、そして許しを請うように頬を撫でた。

縋るようにキュラスを見つめる。
ミリィに騙されていたショックよりも、キュラスとの未来のことが重要らしい（笑）

確かめるような口調でそう言って、手を両手で包み込んで微笑んだ。

キュラスに身を寄せ、そのまま抱きついた（笑）

キルリックは、少しだけ落ち着いた（？）二人の様子を確認した後、ミリィの両肩に手を置いて。

ナッシェレの方へミリィを軽く押し出した。

両手を広げて、がばちょと抱きしめる。

そのとき、部屋に美しい旋律が響き渡った。
それに惹かれるように、庭で囀っていた小鳥たちが次々と飛び込んでくる。
数十秒程も経つと、驚いている一同の周囲は無数の、色とりどりの小鳥で埋め尽くされてしまった。

いきなり目の前に繰り広げられたロマンティックな光景に心奪われた（笑）

実話（笑）

申し訳無さそうに頭を下げる。

ミリィと、皆に向かって頭を下げる。

ミリィはオルフェの言葉に小さく頷くと、自分を抱きかかえるナッシェレの両手をそっと押し戻して、アリエラを驚かせないように静かに前に出た。

意を決したように顔をあげたミリィは、真摯な瞳に大粒の涙を浮かべながらリエラを見て、嗚咽に喉をつまらせながらたどたどしく謝り続けた。
そして、いちど言葉を切ったあと、勢い良く頭を下げる。

言い終えたあと、ミリィは目を閉じて力なく肩を落として、ただ立ち尽くしていた。
まるで雨の中に力なく佇む、捨てられた仔犬のように。

複雑そうな表情でミリィを見つめる。
どうやらミリィに女の子としてのコンプレックス刺激されまくりだったアリエラ。
「ミリィは可愛い女の子だから」と無理矢理自分に納得させて諦めていたのに、それが男の子だったという事実に、なにかやりきれないものを感じているらしい。

良い思い出にしろと言っているつもり（笑）

心を落ち着かせるかのように何度か大きく深呼吸をする。

そしていざ近づこうとしたところで、自分がウエディングドレスを着ていることを思い出し…。

言うが早いか、返事も待たずに呪文を唱え始める。

詠唱に合わせて、アリエラの上空に闇の精霊が召喚された。
脳裏に巡るミリィとの苦い思い出やあれこれを凝縮したかのような、深遠なる闇をその身とする闇の精霊が。

そして、アリエラは、全ての思いをぶつけるかのように、闇の精霊をミリィにぶつけた。

強大な闇の精霊とひとつになったミリィを呆然と見ている。
キュラスは初めてアリエラを怖いと思った。

すっきりとした表情で微笑む。
そしてすたすたとミリィに近づき、その手に触れると、精神を集中して今度は生命の精霊の力を借り、「ヒーリング」でミリィの身体の傷を癒した。

ちなみに冒険時のローブの下は、ソフト・レザーの胴衣の上にセーラーカラーのシャツを着てショートパンツとオーバーニーソックスを履き、そして額に発動体のフェロニエールといった出で立ちだったりする。

ミリィのローブ下の格好を思い出しながら、なんとも無しに後ずさりして距離をとるアリエラ（笑）

最後の最後まで気付かなかった。

あっけらかんと言う。
ちなみに修羅場中はずっと傍観していた（笑）

なでなで。

そう言ってがばっとミリィをお姫様抱っこすると、軽やかな足取りで奥の部屋へと消えていった（笑）

やや呆然としながらも、アリエラの声で我に帰る。

キュラスの腕に手を添えながら、不安そうに見上げる。

無理に笑顔を作ると、アリエラの手を引いて部屋を出て行く。

ドレスの裾を踏まないように気をつけながら、キュラスに付いて行く。
廊下を少し歩いて、新婦の控え室になっている一室の前まで来た。

近くに誰もいないことを確認すると、くるりとキュラスに向き合う。
そして、キュラスの手を両手で包むように持つと、真摯な瞳で見あげた。

キュラスの目を見つめたまま言い切ると、にっこりと微笑んだ。

そう言うとアリエラの体をそっと抱き寄せた。
しばらくそうしてから、ゆっくりと離して微笑みかける。

名残惜しそうに、もう一度キュラスに抱きついてから、アリエラは控え室に入っていった。