00a 銀の網亭・幸せの木

看板を確かめてから中をうかがうようにして入ってくる、金髪の少女。
髪からのぞくわずかに尖った耳は、半妖精の証。

顔ほどもある大ジョッキを抱えてぐいぐい飲む少女。

既に半分が空。

半分まで満たされた大ジョッキを抱えた半妖精の少女が、そ〜っと近づいてくる。

一番奥のテーブルを指差す。

唐揚げ（笑）と大ジョッキを持ってとことことテーブルへ。

暑い最中に、ほかほかの湯豆腐。

豆腐を皿に取りヒョイッと口に放り込む

自分より背の高い人々の合間を素早く抜け、するりとカウンターに顔を出すドワーフがひとり。

そう話しながらも、目の端で素早く、酒場に集う顔ぶれを見渡している。

湯気の立つカップを受け取ると、香りを楽しみながらゆっくりと味わいはじめる。
興味深げな視線が、カウンターでのひとつのやりとりに向けられていた。

伝言板。
その前で腕を組みながら、なにやら考え込んでいる少年がいた。

少年、ヘキサは少し悩んだ後、一枚のメモに手をかけた。
ビリッという音と共にそれをはがしとると、カウンターまで歩を進め、おやじに声をかける。

見慣れた顔の、カウンターでの見慣れぬ仕草に声を掛ける者がひとり。
彼女の視線は、自然とヘキサの手の中のメモに向けられている。

ヘキサは何も言わず、手にしたメモをアビィに渡した。
渡されたメモを素早く一読したアビィの濃緑の瞳がすうっと細くなる。

そう答えつつ、伸び上がって酒場内を見回すアビィ。
あの時パーティを組んだ仲間の顔を探していた。

同様に店の中に視線を一巡りさせた後、アビィに向き直るヘキサ。

強くうなずいた後、カウンターの先を目で促す。

軽く手を振りながら、その場を離れていった。
珍しく興奮しているのか、注文もせずに。

頭を掻きつつ入店し、そのままカウンターに座り込んだ。

エール（中）をずずっと差し出す

言いながら剥がしてきたメモを開いてみせる。

入り口から入ってきた人影を見て、ヘキサの動きが止まった。

ヘキサの影で、そっとやりとりを見守っていたアビィは、彼らの会話と動きを見、そのまま12番テーブルへ向かうのだった。

悩み始めたリールォンに声をかける影があった。

ぺこりと丁寧なお辞儀をしてから、再び口を開くリールォン。

笑いながら、はがしたメモを手渡した。

エールジョッキ片手に遣ってくる。

がばっと立ち上がっておじぎ。

マントの下の聖印に手を添えて

感心したように頷いた。

そんな会話の合間に、首を突っ込む女ドワーフがあった、アビィである。

次々現れる熟練っぽい人々に、挨拶するのが精いっぱいの様子。

アビィの視線は、さりげなく、マントの下にあるマーキュリーの手に向けられていた。

新人の自分が動くべきだと思ったらしく、ぱたぱたとカウンターへ向かった。
それと入れ違いに、ヘキサとリールォンがやってきた。

ペコリと丁寧にお辞儀をしてから、笑みを浮かべるリールォン

そこへ、再びぱたぱたと戻ってくる音。