てくてくと山道を歩く一行。確かに村に近づいているのだが…村人らしき人影は見えない。
　かれこれ２〜３時間は歩いたであろうか？
　日が傾き始めた頃、一行はベクレル村へとたどり着いた。
　村は、静寂に包まれていた。

　点々と建っている家をよく見ると。かすかに煙突から煙があがっている家もある。
　一応…ではあるが、人は住んでいるようだ。

　それらしき他に比べて大きな家を探す。

　同じくきょろきょろ。村全体を見渡す。

　石像を見ても、その不自然さには気付かず、素直に関心している。

　こちらも、不自然さには気付かず、素直に関心。

　近寄ってみた石像をしげしげと眺めるうちに、ミリィの胸に、妙な違和感がこみ上げてくる。
　その正体に思いを巡らせていたが……村長の家（らしきもの）を目指して歩き出した仲間を慌てて追ううちに、いつの間にか違和感の正体に悩むことを止めてしまっていた。

　一人悩むリュント。

　同じく違和感を抱えながらも、仲間の後を追った。

　村長の家らしき建物の扉をノックしつつ・・・

　シーンとした村に、キルリックの声が静かに響く。
　……
　数分後。そっとドアが微かに開いた。

　その声には。微かに怯えが混じっているようだ。

　扉の向こうで、ゴンと鈍い音が。

　何があったか。各自想像に任せる。

　どうなんでしょうねぇ？

　パタパタと足音が遠ざかり、しばらくしてまたパタパタと近づいてきた。

　やっと一人入れるぐらいに空けられた扉。
　扉の中には、やや涙目の少年が立っていた。

　少年に目線の高さを合わせるために少しかがんで、柔らかい笑みを浮かべて問いかける。
　それをよそに無理矢理扉を全開にして

　全開にあけられた扉。夕焼けに照らされる少年。
　先ほどは薄暗くわからなかった少年の姿が、冒険者達の前に晒された。

　…
　少年の体の一部が。石のように硬くなっているように見える。

　どうやら己の体の変化を恥じていたようだ。

　キルリックの手がミァめがけて振り下ろされる。
　げいん。

　残念ながら、そのような雰囲気ではないらしい。

　いろいろあるんだよ。うん。

　かがんで少年と目の高さを合わせて話しかける。　そして、集中して精霊の気配を窺うが、今は外に居るためによくわからない。

　やさしく少年の肩に手をかけ、家の中に入るように促す。

　少年は、冒険者一行を家の中へと案内した。

　家の中は綺麗に片づけられていた。
　とりあえず全員が座れるテーブルまで案内すると、

　台所のほうと思しき方向へと少年は下がろうとしたが、リュントの声にぴたっと止まる。

　ちょっと泣きそうで。ちょっと困った顔をしている。

　考えている。

　でも、発言は疑問系。

　少年の意志ではハッキリ決定できないらしい。

　どうやら。軽いノリではないらしい。

　未知なる事より、身近な危険。

　一瞬、その言葉に固まるアンリ少年。

　ぺこりと頭を下げ、少年は父の元へと行った（のだろう）。