執事ノルクに案内され、邸内へと足を踏み入れる。
と、途端に
ばたばたばたっ！
というやかましい足音が響いてきた。

ウィスノーと呼ばれたその男は、官憲の制服を着ていた。
一行を上から下までじろじろと見つめ回すと、耳に障る声で怒鳴りつけてくる。

ただでさえ暑いのに、ウィスノーの暑苦しい顔に嫌悪感たっぷり。

初対面の相手に対し、いきなり説教を垂れ、その上に不意を撃って拳を振るうパオル（酷）
無礼な相手には、鏡（と拳）をもって対するらしい……。

正反対の意見ここに極まれり（笑）
てか、これがもしアルテナだったら『拳』でなく『剣』になりそうでコワイ……。

パオルの拳がウィスノーの顔面にめり込む。
綺麗に半回転する身体。放物線を描き飛び散る鼻血。そしてウィスノーはうつぶせに倒れ伏した。
……どんな言葉で取り繕おうと、元が悪くては美しくならないものである。

ウィスノーに怒鳴られて一瞬むっとしたルーシアだったが、急な展開に不機嫌になる暇もなかったようだ（笑）
鼻血を出して倒れるウィスノーを呆然と見つめている。

こめかみを押さえながら、バーモントがノルクにそう指示する。
尚もキーキーと喚き立てるウィスノーをなだめすかしながらノルクが彼を連れていった後、バーモントは大きくため息をついて言った。

と、その時。一行の背中から声がかかる。

メイド服姿の女性２人が、買い物カゴを下げていた。

バーモントの説明を無視して、突然駆け出しながら声を張り上げる。

バーモントが途切れそうになった説明の続きを2人に……より正確に言えば、この場に残った1人にする。

ぺこりと頭を下げ挨拶する。

ちらりと仲間を一瞥。『ボクに続いて、自己紹介よろしくーっ』て事らしい。

と。奥の階段から
ずどどどどっ
というけたたましい音が響いてくる。
見れば、先ほどのベルというメイドが階段を転げ落ちていた。

それは違う！

それはもっと違う！！

ベルの転げ落ちてきた階段を降りてくる女性。
2人のメイドとは違い、シンプルだが上品な白いドレスを纏っている。

涙目でその女性を見上げる。

アルシオンの前には、不安の『月』をはじめ、権力の『皇帝』、災難の『塔』、目的のための不安と正気への回帰『逆位置の吊るされた男』などが並んでいる。

アルシオンのカードをひょいと覗き込んで、

いきなりヒドイ事を言う（笑）

分かってるじゃあないか。

唐突なハプニングにしばらく呆気にとられていたレンシオ。
どっちに話しかけるべきかしばらく困惑していたが、ベルの方は大丈夫そうだったので、ドレスを着た女性の方に話しかけてみる。