フィアはルビーを胸の膨らみの足しにしつつ、盗賊ギルドに。
向かっている途中、

前を歩く二人のそんな会話が聞こえた。
娘は10代前半、女性はその姉だろうか。
共に身なりは良かったが、地方からオランに来たお上りさんだと分かる。

目立つ人、妙な人、珍しい人……イコール冒険者、というのがフィア的思考らしい。

常闇通りへの分岐に差し掛かる。
前の二人は、曲がらずに直進。

興味をそそられたらしい。そっと後を尾けてみる。
『正しい仔猫の育て方』とか聞けるかも、なんて考えてたり。

息苦しくならないよう気を付けながら、ルビーを見られないように胸元に潜り込ませる。

胸元で動くルビーがこそばゆい。

必死で笑いそうになるのを堪える。

前の二人は話を続けながら歩く。

自分勝手に解釈。

自分のことは棚に上げる（笑）

娘の方が、突然歩みを止めた。

ルリィはそのまま追い越して通り過ぎ、適当なところで隠れて様子をうかがう。

周囲を見渡す娘。

何やら落ち着かず、もじもじする娘。

二人は、軒を連ねる服飾店の一つに入っていった。

しばらく観察しているうちに、内股になってもぢもぢ。
これは銀の網亭で飲んだ、2杯のカフェオレ？

トイレを借りられそうな所がないか見回す。
今二人が入った店が、一番入りやすそうである。

言いながら女性たちの後を追って服飾店へ。
店内では、先程の女性と男性店員が話をしていた。

泣きそうな声。嗚呼、情けない……。

慌てて駆け込む。
奥の扉の向こうは倉庫になっていた。
トイレは、現在使用中。

待っていると、聞き慣れない音が耳に届く。
ギ、がしゃ。キィ、がしゃ。
重厚な鎧を纏った者が、倉庫の裏を歩いているのか？
壁の汚れた窓に、動く巨大な影が映った。

トイレの扉が開く。

生理現象最優先。
影は後回しでトイレに入る。

その後、影の消えたほうを見てみるが。倉庫の中には誰も居なかった。
あの影も既に去った後である。

裏口に近寄り、まず人の気配が無い事を確かめる。
開錠、そして扉を開けて覗いた。

誰も居ない路地裏。
しかし、石畳の所々に濡れた跡があるのに気付く。

店内に引き返して店員を探す。
店員は、服を見る二人の接客をしていた。

しどろもどろ。
話していると、胸元がじんわり温かくなるのを感じた。

泣きそうな顔でルビーを引っ張り出す。
見事に漏らしていた。

壷にはまった様子。
女性と店員も苦笑い。

内壁で区切られた更衣場所がある。

桜色のワンピースが手渡される。

目に涙を浮かべて、まだ笑っていた。

更衣室で着替える。
お見せできないのが残念。

ワンピは、胸が少し空いた事を除けば丁度良かった。
ただ、この上に皮鎧を付けるのは似合わない気がする。

着替えを済ませて戻ると、支払いが済まされていた。

譲る気は無さそうである。

ぺこり。

初対面の相手を『ちゃん』付けで呼んで良いものか迷ったらしい。

ほんとか？

ケイトがそっと耳打ち。