| SW-PBM Scenario #61B | 目次 |
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| 神殿入り口 |
神殿は、切り出された石を丹念に積み重ねたもので、屋根はドーム型になっている。山の上の村にしては立派なものだ。正面には石の板の両開きの扉があり、ファリスの印が彫り込まれている。扉は、ぴったりと閉ざされている。
| ■アスタルテ To:ALL |
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結構立派な神殿だねえ。 村の人、みんなここにいるといいけど・・・ 一応敵が出てくることも考えた方がいいよね。 |
アスタルテはハルバードを構えつつ、すすすっとさりげなく(本人談)後ろに下がる。
| ■アスタルテ To:ALL |
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じゃ、じゃあボクは敵に備えていつでも迎え撃てるようにするから、誰か開けてね。 べ、別に怖いわけじゃないからね。 そこのところ諸君誤解無いように。 ・・・ほんとにほんとだよ。 |
| ■カナル To:おおる |
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だ、そうだ。 頼むぞ。 |
カナルは杖を構えつつ、堂々と下がる。
| ■アトール To:ALL |
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こういう時こそ、戦士の出番だな。 |
アトールもそう言って、なにげなく下がる(笑)
| ■ソフィティア To:ALL |
| それじゃぁ、まずは神殿の中に向かって声を掛けてみるわね。ただ聞えるかなぁ。 |
扉の真ん前で大きく息を吸い込んで、
| ■ソフィティア To:神殿の扉 |
| 中に誰かいるなら返事して〜!!!!! |
ソフィティアの腹の底からの大声は、神殿の壁をピリピリと震わせた。
すると、少し間があって扉のすぐ内側からコトリと小さな音がした。小さな拳が弱々しく石の壁を叩いたような音だった。
| ■ソフィティア To:ALL |
| あ、中に誰かいるみたい……。 |
| ■アスタルテ To:ソフィティア |
| ほんとに!! |
| ■カナル To:カナル |
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開けてみなけりゃ始まらないだろうよ。 さあ、一気に開けてみようか。 |
| ■ヴィクトール To:ALL |
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そだね、中の人達を早く安心させてあげなきゃ。 ・・・ところで、この扉って引っ張って開けるのかな?それとも押して開けるのかなぁ? |
確かめるようにぺたぺた石の扉を触ってみたりする。
しかし、なでたりさすったり叩いたり押したりしてみても扉は開かなかった。
| ■アトール To:ALL |
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簡単に開くなら、それこそダークエルフに踏み込まれて全滅だろ? 中で村人が生きてるなら、外からそう易々と開けられるとも思えないけど? |
後ろからアトールが声をかける。
| ■アフル To:ALL |
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それじゃあ、中にいる人に頼んで開けてもらう? それでだめなら、アトールかカナルの出番かな? |
そのとき、前にいたアフルとソフィティアとヴィクトールには微かに声が聞こえた。消え入りそうなかすれた声だが、確かに扉の中からしたようだ。
| ■少女 |
| かみさま…… |
扉の前にいたヴィクトールとアフル、ソフィティアは、その声に気がついた。
| ■ヴィクトール To:アフル&ソフィティア |
| 神様って聞こえた・・・よね? |
| ■アフル To:中にいる人 |
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俺達は、オランから来た冒険者です。 この村がダークエルフに襲われてるって聞いてきたんですけど、開けてもらえませんか? |
答える声は無かったが、代わりにパタリと掌で扉を叩く音がした。先ほどよりももっと小さな音だった。
| ■アトール To:ALL |
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なんか、中から開けられるような感じじゃなさそうだぞ? とりあえず、開きそうかどうか見てみる。 開けられそうだったら、早いところ開けてやった方が良いんじゃないか? |
と、扉を一通り調べてみる。罠は無いし、鍵も無い。単に扉にあるくぼみに指を掛けて引っ張れば外側に開きそうだ。
| ■アフル To:中にいる人 |
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……? 大丈夫ですか? |
アフルは声をかけつつ、扉を開けようとした。
が、ピクリとも動かない。
| ■アフル To:カナル |
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ん……、だめみたい。 カナル、もしかして、この扉に魔法ってかかってない? |
| ■カナル To:おおる |
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(折角働いてくれるシーフと組んだって言うのに……) アトールでも開かなかったんだろ? 結局開けなきゃならないなら、いちいち調べるまでもないだろうさ。 |
あんろっくぅ
もういっちょあんろっくぅ〜
ということで、2 回目にして扉にかかっていた「ロック」の魔法は解除された。カナルでさえ、1回目は「ロック」をかけた魔術師の魔力に打ち勝つことができなかったのだ。
| ■カナル To:おおる |
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どうにか成功したぞ。 さて、何が出て来るやら。 |
| ■ソフィティア To:ALL |
| 魔法までかかってたのね。鍵が解けたならわたしが開けるわ。 |
ソフィティアが代表して扉を開けようとする。
しかし、ソフィティアが触れようとする前に扉はゆっくりと動き出した。
ソフィティアは、扉が勝手に開き出したので、思わず身構えた。
扉の動きはだんだんと加速する。
ついに人一人分だけ扉が開いたとき、中から何かがソフィティアの腕に転がり込んできた。同時に大量の煤が舞う。
煤が晴れて気が付いてみれば……
煤で真っ黒けになったソフィティア。
そしてその腕には少女が一人、意識を失ってぐったりしている。煤まみれで、指先は傷だらけで血まみれ。爪が割れている。何度も何度も、開かない石の扉を内からこじ開けようとしたのだろう。少女は、首からファリスの聖印を下げている。
| ■ソフィティア |
| 爪がこんなになって、一体なにが……。 |
| ■カナル To:おおる |
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生きてる……な。 騙されてるのでなければ、まともそうな人間だ。 誰か、介抱してやれよ。 しかしまぁ、何でまたこんな中に……しかも、一人きりでか? |
カナルは中を覗いてみる。まだ煤が舞っている上、暗くてよく見えない。
| ■アフル To:カナル&ヴィクター |
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まさか、これが騙されてるって訳無いでしょ? ヴィクター、介抱をお願いできる? |
と、アフルも中を覗く。徐々に煤が晴れてくる。
| ■ヴィクトール To:アフル |
| うん、分かった。こっちは任せといて。 |
ヴィクトールは真っ黒けの少女の状態を確かた。指先以外には外傷は見つからないし、息は戻ってきているのでしばらくすれば気が付きそうだ。とりあえず指先中心にキュアー・ウーンズで治療する。
少女の傷は完全に癒えた。
| ■アスタルテ To:ソフィティア・ヴィクトール |
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あ〜あ、ソフィティアまっくろ・・・ とりあえずヴィクトール、ここはよろしくね。 |
アスタルテも 2 人の後ろから中を覗く。
| ■ソフィティア |
| 真っ黒……替えの服なんて持って来てないよ(;_;) |
ひとり場違いな絶望感に打ちひしがれるソフィティアであった。
| ■アトール To:ソフィー |
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アフルに洗濯して貰えば?(^^; |
そう言いながら、アトールも中の様子を見に行く。
アスタルテ、カナル、アフル、アトールの 4 人は、煤の晴れてきた神殿に一歩を踏み入れた。
| ■アスタルテ To:カナル・アフル |
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どう? なんか見える? とにかく、中にまだ生きてる人がいるかもしれないからボク入ってみるね。 |
アスタルテはハルバードを構えたまま、周囲を警戒しながらゆっくりと入っていく。
周囲の暗さに目が慣れてくる。
だが、もう動くものは何一つ無かった。そこで目にしたものは、30 人近くの人間だった。女、子供、老人……。何かから逃れたいというように、壁際に肩を寄せ合ってうずくまっている。祭壇の上には油を湛えた火皿がある。開けた扉から入った新鮮な空気が、炎をよみがえらせつつある。祭壇の傍らには神官衣を着た老人が一人、祈る形のまま……
| ■アスタルテ |
| うわあ・・・・・ |
| ■カナル To:おおる |
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これは……。 ダークエルフから逃れるためにここに籠もったと言うよりは、閉じこめられたって雰囲気だな。 しかし、ならなんで火を消さなかったんだ? ダークエルフに殺されるぐらいならば皆共に神の御下へ……なんてそんな度を超した信仰心ってオチはないだろうな。 |
| ■アフル To:カナル |
| まさか、そんな訳無いと思うけど… |
| ■アスタルテ To:カナル |
| そうだよ、それじゃあ信仰じゃなくて狂信になっちゃうよ。普通の信者なら信仰深いというのと狂信の違いくらいわかるはずだよ。 |
| ■アトール To:おおる |
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こりゃ、酷いな。 扉が魔法で閉じられていた事を考えていても、間違いなく閉じこめられていたんだろう。 火も、消さなかったのじゃなくて、消せなかったのかもしれないな。 |
| ■カナル To:アトール |
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消せない炎ね……。 それなら、普通の炎じゃないな。 少し調べてみるか……。 |
一体ここで何があったのだろう?
カナル、アフル、アトールはそれぞれ得意の技能を駆使して内部の調査を始めた。
カナルは火について特に注目した。火元は祭壇の上の火皿しかなく、火皿には今もランプオイルが入っている。さらに、火皿の周囲 100cm 位が特に焦げている。何かここに高温のものがあったのか?
セージとしての知識を探る。消せない炎、高温の炎といえば……
| ■カナル To:アフル |
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おいアフル……お前さん、火トカゲを支配できるか? もしかして、火トカゲをここに呼び出して、そして扉を閉められたとしたら……。 |
| ■アフル To:カナル |
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うん、サラマンダーを何かに封じ込めておいて、その火皿の所にいさせるってのは俺でもできるよ。 そうしたのなら、火が消せなかったのも不思議じゃないと思うけど… 精霊をそんな風に使うなんて… |
アトールの見たところ、建物自体の機密性は非常に高そうだ。しかし、扉周辺は唯一の開口部であり、多少隙間がある。壁は一面の煤で真っ黒だが、それ以外にも高温のものが走ったような黒ずんだ跡がある。遺体には外傷はなく、窒息か毒が死因のように見える。
さらに床を丹念に探した結果、いくつかの穀物の粒と同時に……
| ■アトール To:おおる |
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どうやら、その推理で正解みたいだぞ。 その封じ込めた何かってのが、これみたいだな。 |
床に砕けたルビーのかけらを見つけた。
| ■アフル To:アトール |
| うん、それだと思う。 |
| ■カナル To:おおる |
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(分かりやすいダークエルフらしいやり口……ってことか? 何かこの流れは気に入らないな……) なるほどな。 精霊使いに、魔術師か……。 |
| ■アフル To:ALL&カナル |
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うん、少なくとも、コントロールスピリットは使えるぐらい、のね。 ダークエルフなんだし、精霊魔法は使えて当然なんだけど… あ、カナル、ちょっとあの女の子の様子を見てきてくれないかな? ここには男の人達はいないみたいだし、どこに行ったのか知っているかもしれないからね。 |
アフルは火皿の火を消し始める。
サラマンダーの気配が消えた。精霊使いであるアフルの目にも、周囲はとても静かになった。
| ■カナル To:アフル |
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ああ、そうしよう。 大丈夫だとは思うが、気を抜くなよ。 |
カナルとアトールは神殿を出ていく。
| ■アスタルテ To:カナル&ALL |
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うん、まかせといて。
さてと、この人たちをこのままにはしておけないよね。 |
神官であるアスタルテはぐるりと神殿を見渡しながら、死者全員に語りかける。
| ■アスタルテ To:ALL |
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みんな早く楽になりたいだろうけど、お墓を造るのは今回の件が全部終わってからしか無理だから我慢してね。 必ず解決してみせるからね。 ・・・あと、宗派違うけど我慢してね。 |
軽く床にひざをつき、ハルバードと背中の荷物を床に置いて胸の前で両手を組むと、まだたどたどしいが神殿の中に響く声で精一杯の弔いを始めた。
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