ここはオランの街中、人々が憩う広場。
　恋人達が愛を語る傍らには、立派な宝飾店や細工物を売る屋台などもある。

　あちこちから呼びこみの声が聞こえてくる。

　ソフィティアはちゃんとした店を構えている宝飾店を指差した。

　話は、以前の仕事の時にアフルが古代王国の遺跡で青い宝石の指輪を得たことに遡る。オランに戻るとすぐ、それをソフィティアにプレゼントしたのだ。「婚約指輪」として。

　アフルの背中を押しながら貴金属店に入っていく。店内には、指輪を始め腕輪、首飾り、耳飾りなど様々なアクセサリーが飾られている。

　女性の店員が愛想よく微笑んできた。

　と言いながら左薬指の指輪を丁寧に抜いて店員に見せる。

　丁寧な手つきで指輪を受け取り、ルーペで仔細に観察している。ややあって、顔を上げた。指輪をソフィに返し、2 人を見てにっこり微笑む。

　さすがに古代王国の遺跡由来の品と同じものは無いようだ。

　見た目はほとんど同じだが、並べて比較するとやはりデザインに新しさを感じる。サイズは、ソフィの持っているものと同じだ。

　今度のは、アフルの薬指にぴったりだった。

　と、ソフィティアが持っていた方の指輪を指す。

　店員は、2 つの指輪を持って奥に入っていった。見まわすと、店内には他にも様々なアクセサリーが飾ってある。アフルは店内の、アクセサリーをぐるりと見まわした。

　棚を見ていたアフルがそれを聞いて戻ってくる。

　店員が持ってきた絹の台座の上には、サイズだけ違ったそっくりな青い石の指輪が 2 つ並んでいる。

　サイズ確認もかねて早速太い方のリングを手に取り……

　アフルが左手を差し出す。ソフィティアがその手を左手で軽く支えて、右手に指輪を用意する。

そう言いながら、ソフィティアはアフルの薬指にリングをはめる。

　と、もうひとつの指輪を手に取る。

　ソフィティアは、にこにこしながらアフルに指を差し出した。

　アフルはソフィティアの指に指輪をはめて、その上に自分の手を重ねて、嬉しそうに笑った。

　2 人は仲良く店を出た。