「なんでもやってみなはれ、
やらなわからしまへんで」(鳥井信治郎)
| フェバーク家 玄関ホール |
| ■ エレック |
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……私は、エレックが羨ましかった。 華やかな舞台での話を、いつも聞かされてきた。 私にだって…………ずっとそう思ってた。 エレックが亡くなったときは、哀しかった。 ……しかし、チャンスだとも思った。 私ならば、エレックの代わりを務められる、そう信じた。 しかし、やはり名声は全てエレックのものだった。 馬鹿な話だわ。 |
震えるその声は、いつもより多少トーンが高い。
初めて聞く、これが『エレック』の本当の声なのだろう。
……それは、紛れもない女性の声だった。
| ■ クレフ(独り言) |
| じょっ、女性…!? |
| ■ ジーク To:クレフ |
| みたいですねぇ(^^;; |
| ■ アシスト To:エレック |
| エレックさんて……女のヒトだったの?(・・; |
| ■ アップル(心の声) |
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自信はなかったんだけどな。。 |
| ■ エレック To:アシスト |
| ……騙していてごめんなさいね。 |
| ■ イルミナ To:エレック>執事 |
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やっと、言ってくれたわね... まさか、執事であるあなたが彼女の存在を知らなかったとは思わなかったけれど... あなた方の追いかけるエレックは一年前に病死しているのよ。 そう、彼女はエレックではないわ... フェバーク家の血を受け継いだもう一人の存在ではあっても”男児”ではないわ... これでも、まだ彼女を殺す理由があって? |
| ■ 執事 To:イルミナ |
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…………それはその通りだな。 しかし、まだ確認できたわけでは……。 |
| ■ ?? To:執事 |
| やめないか、馬鹿者が! |
その時、屋敷の奧からエレックによく似た面立ちの男性と、それに抱えられるようにして一人の女性が入ってきた。
| ■ 執事 To:セイル |
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セイル様、なぜここに? 本日は、御領地の方へ行かれているはずでは! |
| ■ セイル To:執事 |
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全ては、妻から聞いた。 こんな事をせずとも、家督はケネスに譲るに決まっているだろうが。 平穏に暮らす子にまで、何故醜いこの世界の責を負わせねばならんのだ! あの時、お前達の言に従いルフィアを家に戻したのは、このような世界に彼女を引き込みたくはなかったからだ……。 |
| ■ クレフ(独り言) |
| ………そういうことなんですか… |
| ■ ジーク To:セイル > 執事 |
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どうせなら20年前にそう言っていただいていたなら、今ごろこんなことにならなかったと思いますけどね。 さて、どうします? |
| ■ セイル To:ジーク |
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私の力も、それほどのものではないものでね。 あの時も、唯一できたことは、放逐された彼女への追っ手を抑えることぐらいだったよ。 |
| ■ ジーク To:セイル |
| そうですか・・・・。 |
| ■ 執事 To:ジーク |
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その者が男であるならば、セイル様がなんと言おうと、決して逃しはしない。 しかし、女であるというのなら、命を奪おうとはおもわん。 |
執事の指示で、武装した男たちはどこかへ消えた。
それを見届けた上で剣を収めるジーク。
| ■ セイル To:エレック、おおる |
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このようなことになってしまって申し訳ない。 改めて、本当に私の名前で晩餐へ招待させていただきたいのだが。 |
| ■ イルミナ To:エレック |
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いろいろ思うところもあるかもしれませんが、この方があなたのお父様であることは紛れもない事実...20年という長い年月を埋められるかどうかは別としてセイルさんの申し出を受けて欲しいわ。 |
自分の両親のことを思いだし少しさびしそうに、そして羨ましそうにエレックをみる。
| ■ エレック To:イルミナ |
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……ええ。 |
エレックは、複雑な表情で頷いた。
そんなエレックの憂いた表情を振り払うように、
| ■ アップル To:エレック |
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すくなくとも・・、ここでは貴方はあくまで貴方自身なんです。 今日は影でいる必要はないんですよ^_^ そして、これからのことは、晩餐のあとから考え始めましょうよ! |
そんなエレックの憂いた表情を振り払うように、明るい声を上げるアップル。
| ■ エレック To:アップル |
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ええ、ありがとう。 でも、久しぶりにこういう風に喋ってみると、何か気恥ずかしいな。 ……こういう話し方の方に慣れてしまったよ。 |
照れ隠しのためか、男性の時の声を出す。
| ■ ジーク To:セイル |
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私はジークといいます。 先程の失礼な言葉をお許しください。 |
| ■ セイル To:ジーク |
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いや、君たちのおかげで、私はまたも大切な者を失う過ちを犯さずにすんだのだ。 許すどころか、こちらから礼を述べさせて貰いたい。 ありがとう。 |
そう言うと、セイルは頭を下げた。
| ■ セイル To:エレック |
| そしてエレック……いや、アーネスかな? |
| ■ アーネス To:セイル |
| ……何で私の名前を? |
エレック……いや、アーネスが驚きの声を上げる。
| ■ セイル To:アーネス |
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男ならばエレック、女ならばアーネスと名付けようと話したことがあったのだよ。 覚えていてくれたのだな。 しかし、まさか二人も子供をもうけてくれたとは……。 エレックにはすまないことをした。私がもっとしっかりしていれば……。 |
| ■ セイル To:アーネス |
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ところで、アーネスよ。 お前はこれからどうしたい? この20年間を埋めたいのだ。一緒に住んではくれんか? |
| ■ アーネス To:セイル |
| …………私は、このような生活よりも、舞台に立って歌う方が好きなんです。 |
アーネスは、きっぱりと言い切った。
| ■ アップル To:セイル&アーネス&おーる |
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歌っているエレ・・アーネスさんってすっごく素敵なんですよ♪ ・・・そうだ! セイルさん、アーネスさん初主演の「リュスイが野の風」、明日が初日なんです。 2週間ほどの公演ということなんで、一度、いらしてみたらいかがですか? そうすれば、アーネスさんが楽しそうに歌っている姿をごらんになれますよ |
| ■ セイル To:アーネス |
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……そうか。 なら仕方がないな……。 ならば、お前のことを後押し……。 |
| ■ アーネス To:セイル |
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それも辞めて下さい。 エレックの……そして私の夢は、自分の手で叶えたいんです。 |
先程よりも強い拒絶。
| ■ アシスト To:セイル |
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エレックさん……じゃなかった、アーネスさんは今度の公演で自分の力を試したいんだって。 だから…… |
| ■ セイル To:アーネス |
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私の力は必要ないというわけか。 それならば、お前が一人で立てるようになるまで待つとしよう。 その名前がフェバーク家に負けぬようになったとき、一人のファンとして改めて力添えをしてやりたいものだな……。 |
セイルは淋しそうに言った。しかしその目の奧には、満足そうな笑みがあった。
| ■ ジーク To:エレック |
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エレックさんなら大丈夫ですよ。 すぐにでも名声を勝ち取れると思います(^^ |
| フェバーク家 食堂 |
その夜はフェバーク家での晩餐に参加することとなった。
| ■ ケネス To:エレック |
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うわぁ、お兄ちゃん、本当にあのエレック? この前のも見に行ったんだよ! 絶対次も見に行くからね! |
アーネスの希望で、あくまでエレックとして、そしてフェバーク家との関係も一切伏せられた一人の歌劇歌手としての晩餐となった。
自分の兄……いや、姉とは露にも思わないケネスは、初めて会うエレックにはしゃぎっぱなしだった。
| ■ クレフ(独り言) |
| お姉さんだと知ったら、どうするんだろう…?(-◇-;) |
| ■ ジーク To:クレフ |
| お姉さんっこになりそうですね(笑) |
| フェバーク家 玄関ホール |
帰り際。
セイルは、冒険者達に大きな包みを手渡した。
| ■ セイル To:おおる |
| こういう形でしか、誠意を表せないことが申し訳ない。 |
| ■ アップル To:ジーク&おーる |
| えーと・・・・?^_^;; |
もらっちゃっていいの?っていう目つきで仲間を見回す。
| ■ ジーク To:アップル > セイル |
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(^^;; ・・・・判りました。ありがたく頂戴させていただきます。 |
| ■ アシスト To:セイル |
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そのかわり、エレックさんの意志を尊重してあげてくださいね。 でないとこれは受け取れません。 |
| ■ セイル To:アシスト |
| ああ、約束しよう。 |