クラウディア達が銀の網亭に戻ると、他に客もない様子でおやじが食器を拭いている。

　おやじは食器を拭く手を休めずに応える。

　そう言いながら、おやじは食器を置き、棚から茶葉を取り出す。
　ややあって、フィリスの前にミルクティが置かれた。

　と、ちょうどそのタイミングで、店の入り口が開いた。

　フィアルラが機嫌良さそうに買ってきたケーキの箱を見せる。

　その言葉を自ら証明するように、ぐ〜という音が鳴る。

　リーアはなにやら落ち着かない様子で、きょろきょろと酒場の中を見ている。

　ついさっき食べさせられていたものを思い出して苦笑する。

　リーアはぱっと表情を明るくすると、身を乗り出した。

　フィリスは自分の隣の椅子を引くと、ぱたぱたと椅子を叩いて招く。

　リーアは嬉しそうにぴょんと椅子に座った。

　クラウディアは、親しげに肩に手をかけつつ訊ねた。

　ケーキの方をじ〜っと見つめていたリーアが、クラウディアの声に気付いてそちらを見る。

　リーアはオジイから視線を逸らしつつ、手はそ〜っとケーキの更に伸びている。
　と、その手をすかさずフィアルラがぺちっと叩いた。

　なにやら呻きつつ、眉間にしわを寄せてケーキを睨む。

　オジイは、ウェイツから聞いた内容を手短に説明する。

　しばらくケーキを睨んだ後………

　と言って、ナイフを手に取る。

　と、フィアルラはアンゼ(?)から手の届かないところにケーキを待避した。

　アンゼ(?)は少し不満そうだ………。