勝利を掴む叫び

　まず現れたのは、ジョージだった。

　と、財布をそのままジョージに渡した。

　ジョージが食べものを買いに行ったのと入れ違いで、アルト達が合流した。
　リトナル商会ではさんざんだったフェリオも、スラムの入り口でアルト達に合流したらしい。

　近付くと、ヴァーンとパオルからは酒の残り香が漂っていた。
　素早くそれ嗅ぎつけると、かるく笑いながら、

　学院で調べた情報を報告し、作戦を練る。
　アニエスの力は、先程の戦闘で十二分に味あわされている。否応なしに慎重にならざるを得ない。
　その時、マスクのデザインが微妙に変わった仮面ラーダが、テーマソングと共に現れた。
　……一生懸命にマスクを修理したジョージの苦労を想像すると、少々哀れだがかなり笑える。

　フェリオから力を受け取り、仮面ラーダはヴァーンとフェリオの傷を癒した。

　フェリオは、包み隠さず仮面ラーダに伝えた。

　『ぴっかり君』を手前に掲げながらそう言った。

　ランタンに火を入れ、シェルに手渡した。

　ヴァーンとリュースは身軽に屋根に登った。

　ヴァーンはロープを取り出し、リュースに端を胴に巻きつけてしっかり持たせた。
　諸々の準備が整い、下の連中に合図を送る。

　倉庫の闇を取り払うべく、呪文を詠唱したアルトだが、

　ほんの一瞬、完全な静寂が夕闇のスラムに訪れた……。

　フェリオとなるべく目を合わせないようにしつつ、暗闇を見つめるアルト。
　その額には一筋の汗が流れていた。
　そのアルトの横顔をじっと見つめるフェリオ。
　そして、軽く目を逸らしながらぼそりと、

　アルトは、再び暗闇に向かって精神を集中させた。
　その表情には、かつてない気合いが込められている。

「２４時間耐久説教スペシャル悶絶絶叫コース」がよほど恐ろしかったのか。
　アルトの呪文は見事に発動した。

　上位古代語を解さないフェリオにも、アルトの詠唱に込められた気合いは十二分に伝わったらしい。

　パオルは、新たなる決意と共に、倉庫へ向かって突進した。
　そして、それはパーティー全員の思いと同じであった。