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| コスメル村 |
盗賊ギルドの情報やリーシェの話の通り、コスメル村はごく普通の村のようである。大きくもなく、小さくもなく、一見した風景からは、何か特別な産業があるようでもない。 川沿いに位置する村のため、小さな船着き場があることが、強いて言えば特徴ということになるだろうか。その船着き場には今、小さな人影が荷物下ろしの作業をしているのが見える。
ほかに一行の目をひくものとしては、船着き場と隣り合う場所に建っている、商店風の大きな――あくまでも、この村の規模と比較しては、の話ではあるが――二階建ての建物と、 道を挟んでその向かいにある、やはり二階建ての酒場らしき建物がある。昼過ぎからいっそう雨足が強まってきたこともあってか、船着き場にいる一人を除いては、 道にも畑にも全く人の姿はない。牧草地の木陰で、羊の小さな群れが雨宿りしているのが看て取れるくらいである。
| ■ソフィティア To: |
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出発する時はあれほど天気が良かったのにまさか雨が降るとはね〜。 あぁ〜あ、体流したいな。もぉ〜ベトベト(^^;。 |
アフルも隣でぼやいている。
| ■アフル To:独り言 |
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ああ、また雨が強くなってきた… リュートに湿気は大敵だって言うのに……ブツブツ |
| ■ノエル To:ALL |
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ようやくついたわね〜 みんなもいろいろしてみたいことはあるだろうから、これから少し自由行動にしてみない? 夕方あそこの酒場で集合することにしましょう。 単独行動するときや別の場所に行くときは、必ずメンバーの誰かに自分の居場所を教えていってね。 行方不明になってもわからないのでは困るから。 |
そう言って、ノエルは一同を見回した。
| ■ノエル To:ALL |
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私はとりあえずミシャルカちゃんを連れてあっちの酒場らしいところに行ってみるわ。 まずはこの雨に当たらないようにしてあげないとね。 それから酒場のおやじさんにいろいろな話を聞いてみる。 |
| ■ソフィティア To:ALL |
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それじゃあ、私は船着き場の辺りに行ってみるわ。下流からの噂話とかもあるかもしれないしね。それじゃぁ、またあとで酒場であいましょう。 また濡れちゃうわねぇ〜。 |
ソフィティアは、船着き場のほうへ遠ざかっていった。
| ■アトール |
| あ、おい・・・・いっちゃった(^^; |
去っていくソフィティアを呆然と見つめるア・トール。やがて気を取り直すと、ノエルのほうを向いてこう言った。
| ■アトール To:ノエル |
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この雨だし、すぐに情報収集に入らなくたっていいんじゃないか? 歩きづめで疲れているのは、その子だけじゃないだろ。 とりあえず、みんな一休みした方が良いと思うぞ。 宿屋だったら休みながらでも、町の様子とか場所とかも聞けるだろう? 何の手がかりも無くて焦ってるのかもしれないけど、闇雲に動いてもしょうがないんじゃないかな? どっしり構えてじっくり確実に行こうぜ、今回はリーダーなんだしね。 |
| ■アフル To:アトール&ノエル |
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そうだね。俺もとりあえず宿屋で一休みしたいな。 なんなら、ソフィーを呼んで来ようか? この雨じゃぁ、あんまり外に出歩く気は起きないしね。 |
| ■ ウィード To:アフル |
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"宿屋で一服"に俺も賛成だな…^^; 休めるときに、体を休めておきたいし、 情報集めの前に今後の行動予定なんかを話しておくのもいいだろう? |
シルディアもうなずいている。休みたいというのは、あるいはエルフの彼女がもっとも切実に望んでいるのかも知れない。
| ■ノエル To:アフル&ア・トール |
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一休みも自由行動の選択の一つだとは思ったのだけど・・・ でも、疲れているのに焦って動き回ってもどうにもならないのかもしれないわね。 アフル、お願いしていい? |
| ■アフル To:ノエル |
| うん、それじゃ、呼んでくるよ。 |
言い残すと、アフルはすでにずいぶん遠くへ行ってしまっているソフィティアを追いかけていった。
ふと、ノエルはリーシェに尋ねる。
| ■ノエル To:リーシェ |
| そういえば、以前この村に来たときとなにか変わっていることはありませんか? |
| ■ リーシェ To:ノエル |
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さあ……。五日ほど前にこの村に滞在したときには、あそこの宿以外には、ほとんど足を運びませんでしたから。 あの日も、わたしたちが村に着いた昼頃から次の日の明け方くらいまで、今日のような強い雨だったので、外へは出歩かなかったのです。 |
こうして、船着き場のほうへ向かった二人を除いた一行は、休憩を取るべく、その酒場兼宿屋に向かうことにした。
雨合羽を着ると、人は多少恰幅よく見えるようになるものだが、それを差し引いても、その人物の肉付きの良さは目をひいた。荷物を上げ下ろししている両腕の太さは、 ソフィティアの太股ほどあるかに見える。背丈はむしろ、彼女のほうが少々高いくらいなのに、である。
ソフィティアは、軽く声をかけてみた。
| ■ソフィティア To:港にいる人 |
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あのぉ〜、ちょっと良いかしら? 最近、ここら辺で変わった話しとか事件とかって話し聞いてない? |
話しかけた相手が彼女のほうを振り向いたとき、ソフィティアは軽く息をのむことになった。 てっきり男性だと思いこんでいたその人物の胸が、豊満な二つの膨らみによって、ぐいと盛り上がっていたからである。
| ■ 女性 To:ソフィティア |
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なんだい、あたしに何か用かい? ぼさーっと突っ立ってんなら、荷物下ろすの手伝っとくれよ、アッハッハ♪ |
豪快なおばちゃんである。
その勢いに、思わず一瞬引きかけたソフィティアだが、もともとが人のよい彼女は、女性とその場の雰囲気から、思わず手伝おうとする。
| ■ 女性 To:ソフィティア |
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ばかだね、あんた♪ 冗談だよ、冗談、アッハッハ♪ ま、若いうちはばか正直もいいやね♪ |
| ■ ソフィティア To:女性 |
| (^^; |
日焼けした顔でソフィティアに笑いかけると、女性は荷下ろしの作業を再開する。見るからに重そうな荷物を軽々と持ち上げ、てきぱきと陸揚げしていくさまは、見る者に痛快さのようなものさえ覚えさせる。 そこそこの膂力の持ち主であるソフィティアも、この女性にはとてもかないそうにない。たとえ手伝っても、あまり助力にはならないかも知れない……。
ともかくも、話しかけたのがいい人でよかったと、少し安心するソフィティアであった。
ところで、ソフィティアの最前の問いかけを、おばちゃんはしっかり聞いていたようである。荷下ろしがほぼ片づくと、女性はやや唐突に言った。
| ■ 女性 To:ソフィティア |
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変わった話や事件? そんなのは聞いてないねえ、あたしは。 でも、そういう噂話みたいなことなら、シュゾのやつに尋ねるといいよ。ここの店の主人なんだけどさ。 |
中年女性は、船着き場と接した場所にある商店風の建物を指差した。
| ■ 女性 To:ソフィティア |
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あたしもこれからシュゾに顔出すから、一緒に来るといいさ。 それより、あんたみたいな若い娘が、ずぶぬれになっちゃダメだよ。身体が冷え切っちゃうじゃないか。 |
| ■ ソフィティア To:女性 |
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それじゃあ、シュゾさんの所に一緒にお邪魔させてもらいます。 身体の事まで気にしてくれて有り難う。確かに、ここに来るまで濡れっぱなしだったから、身体、冷えっちゃってるわ(^^; 話しを聞いたらゆっくり寛ぐ事にします。 |
さて、小走りしてきたアフルは、中年女性と話しているソフィティアのところまで来た。
| ■アフル To:ソフィー |
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おぉい、ソフィー。 みんな疲れてるし、一旦酒場で一休みしてから動こうってことになったんだけど、どうする? |
アフルが来るなり一言。
| ■ 女性 To:アフル |
| あんた、この娘のこと、もっと気をつけてやんなきゃ。身体冷やしたら、いい赤ん坊が産めないよ、アッハッハ♪ |
おばちゃん、二人を見て何か勘違いしているらしい……。
| ■アフル To:おばちゃん |
| え、あ、いや、そんなんじゃ… |
| ■ ソフィティア To:女性 |
| お、おばちゃん。私たちは、そ、そんなのじゃないってば(*^^*) |
二人とも、見事な狼狽ぶりである。特にソフィティアは、昨晩のア・トールとの会話のこともあってか、いきなりの話題に胸の鼓動が急激に高まっていくのを抑えきれない。
| ■ 女性 To:アフル&ソフィティア |
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おやおや、別に隠すことないじゃないか。なかなかお似合いだよ、アッハッハ♪ 若いってのはいいねえ〜♪ |
ややぎこちなく、アフルは話題をそらそうとする。
| ■アフル To:ソフィー |
| そ、それで、ソフィーはどうするの? |
| ■ソフィティア To:アフル |
| え、えっと……。 |
この種の動揺は、無理に抑えようとすればするほど、かえって増してしまうものである。
ソフィティアは、シュゾなる人物の店であるという建物を、腕を細かく振るようにして繰り返し指差す。
| ■ソフィティア To:アフル |
| わたしは今からあそこに一緒に連れていってもらって、おばさんからシュゾさんって人に話しを聞けそうな人を教えてもらったから、話しに行くの………… |
言わんとしていることは理解できなくもないが、話しぶりは明らかに正常でない。
それは彼女自身も自覚したらしく、さらに上気してしまう。いまやソフィティアの顔は、湯気が立ちのぼりそうなほどに真っ赤である。
| ■ソフィティア To:アフル |
| その話しを聞いたら直ぐ戻るつもりだけど、みんな私の帰りをまってるの?(^^; |
対照的に、アフルのほうはわりと冷静である。
| ■アフル To:ソフィー |
| えーっと、どうなんだろ |
見れば、彼ら以外の一行は、斜向かいの酒場らしき店に入っていくところである。
| ■アフル To:ソフィー |
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やっぱり、ミシャルカちゃんが疲れてるみたいだったし、先に酒場の方に行っちゃったみたいだね。 ま、いいや、どうせだし、先にそこのシュゾさんって人に話を聞いてから酒場に行こうよ。 |
ようやく少し落ち着いてきたソフィティアは、こくこくとうなずいた。
| ■ 女性 To:アフル&ソフィティア |
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そうかい、じゃ、ついてきな、お二人さん♪ あ、そう、あたしゃロゼルナってんだ。ここで会ったも何かの縁だろ、よろしくな♪ |
| ■ ソフィティア To:ロゼルナ |
| わたしは、ソフィティアっていいます。ロゼルナさん宜しくお願いしますね。 |
| ■アフル To:ロゼルナ |
| 俺は、アフルっていいます。 |
| ■ ロゼルナ To:アフル&ソフィティア |
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ちゃんと名乗るなんざ、近頃の若い者にしちゃあ、なかなか感心じゃないか。 ソフィティアにアフルだね、覚えとくよ。 |
ロゼルナに連れられた二人は、「トーレス商店」との看板の下がった店を訪ねることになった。
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